Q:
私は30代の男性です。私の両親は、私が3歳の頃に離婚しました。その後、私の母親は再婚し、私は母親の再婚相手と養子縁組をしました。養父は実の子どもであるかのように私を可愛がってくれて、私も幼い頃から、養父を実の父親だと思って成長しました。そのため、母親の離婚後は、本当の父親との交流は全くありませんでした。
しかし、先週突然、消費者金融から私宛てに督促状が届きました。私はこれまでに消費者金融からお金を借りたことは1度もないので、驚いて、すぐに消費者金融に問い合わせたところ、実の父親が生前に消費者金融からお金を借りていたそうですが、半年前に亡くなったということでした。そのため、子供である私宛てに督促状が送られてきたようです。
①私は、母親の再婚相手と養子縁組をしていますが、実の父親の相続人になってしまうのでしょうか?
②相続人となってしまう場合、今からでも相続放棄をすることができるのでしょうか?

A:
まずは、1つ目の、ご両親が離婚した後、お母様の再婚相手と養子縁組をした場合でも、実の父親の相続人になってしまうのかという点についてご説明させていただきます。
法律上、養子縁組には、①普通養子縁組と②特別養子縁組という2種類の養子縁組があります。普通養子縁組と特別養子縁組の大きな違いは、戸籍上、本当の親との親子関係が続くか否かという点です。
普通養子縁組の場合には、養子縁組後も本当の親との親子関係が続きますので、養親組後も、本当の親の相続人となります。一方、特別養子縁組の場合には、養子縁組後は、本当の親との親子関係はなくなりますので、本当の親の相続人とはなりません。
通常は、親御さんの再婚相手と養子縁組をされる方のほとんどが普通養子縁組ですので、ご相談者の場合も普通養子縁組であることを前提にしてご説明させていただきます。
そうすると、ご相談者は、お母様の再婚相手と養子縁組をした場合でも、実の父親の相続人になってしまうということになります。

Q:
それでは、相続放棄をすることができるのでしょうか?

A:
そうですね。では、2つ目の、②相続人となってしまう場合、今からでも相続放棄をすることができるのかという点についてご説明させていただきます。

亡くなった方のことを被相続人と言いますが、被相続人が亡くなると、相続人は、被相続人が有していたプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も、受け継ぐことになります。そのため、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産の方が多い場合には、相続放棄をすることによって、相続人がマイナスの財産を受け継がないようにすることができます。

相続放棄は、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、相続放棄をする必要があります。相続放棄は、裁判所に書面を提出して行う必要があります。

Q:
相続放棄は、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にする必要があるんですね。
実の父親は半年前に亡くなっていたということで、3か月を過ぎてしまっているようですが、それでも相続放棄することができるのでしょうか?

A:
相続放棄は、「相続が開始してから」、つまり、「父親が亡くなってから」3か月以内にする必要があるのではなくて、「相続の開始があったことを知ったときから」、つまり、「父親が亡くなって、自分が相続人になったことを知ったときから」3か月以内にする必要があります。
先週、消費者金融から送られてきた督促状を見て、そして、消費者金融に問い合わせて、実の父親が亡くなったことを知ったということですので、その日から3か月以内に、裁判所で相続放棄のお手続きをすれば大丈夫です。
実の父親と全く交流がなかったとのことですので、実の父親にプラスの財産があるかはわかりませんし、むしろマイナスの財産がもっとたくさんある可能性もありそうですので、相続放棄をされた方がよろしいと思います。

Q:
相続放棄の手続きというのは、どのようにして行うのですか?

A:
相続放棄をするためには、裁判所に、相続放棄の申述書という書面や、亡くなった方の死亡の記載がある戸籍謄本や住民票の除票、相続放棄をする方の戸籍謄本等が必要になります。
相続放棄はご自分でもすることはできますが、もし提出する書面や戸籍謄本などをご自分で用意することが難しい場合には、わたくしどものような専門家にご相談された方がよろしいかもしれません。

(12月21日放送)