Q:
私は川口市に住んでいる40代の女性です。主人とは10年前に結婚し、共働きです。
わが家では、6年前に捨て猫を1匹拾って育ててきました。カンパチという名前をつけています。猫の面倒はほぼ私が見ていて、主人には、あまりなついていません。もっとも、主人は面倒を見ませんが、カンパチをかわいがっています。
今年で、主人と結婚してから15年になりますが、近々離婚を切り出そうと思っています。最近、友人とお茶をしていたときに、離婚する場合には、財産分与というものがされることを聞きました。
そこで質問なのですが、猫などのペットも財産分与の対象になってしまうのでしょうか?対象になる場合には、離婚する際には自分が引き取りたいと考えていますが、主人もカンパチをかわいがっているので、心配しています。
また、主人もカンパチを引き取ることを希望している場合、私がカンパチを引き取ることはできるのでしょうか?

A:
まず、財産分与についてご説明させていただきます。
以前にも財産分与についてお話させていただいたことがありましたが、財産分与とは、夫婦が離婚する際に、夫婦が結婚してから別居するまでの間に築いた財産を分け合うことをいいます。
夫婦で築いた財産を共有財産と言い、共有財産が財産分与の対象となります。共有財産の全体の二分の一が、財産分与の割合となります。

それでは、次に、ペットは財産分与の対象になるのかという点についてご説明させていただきます。
ペットについては、子どもに近い感覚で飼われている方も思われますが、法律上は、ペットは動産、すなわち物として捉えられることになっています。ペットは動産、つまり物として捉えられてしまうことについては、以前にもご説明させていただいたことがあったと思います。
動産も財産分与の対象になるので、ペットも財産分与の対象となります。

今回のご相談のように、夫婦の双方がペットの引き取りを希望している場合を考えてみましょう。
今回のカンパチちゃんは、夫婦の婚姻中に飼われるようになりましたので、夫婦の共有財産となります。そのため、カンパチちゃんについては、夫婦双方がそれぞれ2分の1の持ち分を持つことになります。
夫婦双方がカンパチちゃんの引き取りを希望していて、お話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の審判や裁判となり、どちらがカンパチちゃんを引き取るのかについては、一切の事情を考慮して、裁判官が決めることになります。

ペットは単なる物ではなく、命があるという特殊性があります。ペットが家族であるという認識も一般的になってきましたので、「一切の事情」を考慮する際には、子の監護者や親権者を決める際の判断要素が参考になります。
具体的には、主にペットの監護をしてきたのは夫婦のいずれか、今後夫婦のどちらが飼った方がペットにとって望ましいか、などの事情です。

今回のご相談者の場合には、ご相談者の方がカンパチちゃんの面倒をほとんど見ていること、ご主人にはあまりなついていないこと等の事情があるようですので、ご相談者の方が引き取るのが妥当と判断される可能性が高いと思います。

Q:
仮に、夫婦の片方だけが引き取りを希望している場合には、どうなるのでしょうか?

A:
この場合であっても、ペットが夫婦の共有財産となること、夫婦双方がそれぞれ2分の1ずつの持ち分をもつことは、先ほどと同じです。
もっとも、ペットを2つに分けることは現実にはできませんから、ペットを引き取る方がもう一方の配偶者にペットの2分の1に相当する代金を支払って、引き取ることになるでしょう。
なお、このときの代金の額は、そのペットが一般的な市場で売買される値段となります。ですが、ペットショップに行けばわかるように、ペットとして中心的に売られているのは子猫、子犬などの1歳以下のペットであり、成長した1歳以上のペットの場合には、金額は0円として扱われる場合が多いと思います。そのため、実際には、片方が無償でペットを引き取ることになることがほとんどではないかと思います。

(平成30年1月11日放送)