Q:
私は5歳半の子どもを抱えるシングルマザーで、日中は飲食店でパートとして働いています。
私が働いている店の正社員には有給があり、実際に有給をとっている人もいます。
私も、ウィークデーに息子と出かけたいこともあって、有給が欲しい旨を店長に告げたところ、「パートには労働基準法は適用されないから、有給もない」と言われました。
たしかに、私は正社員と比べると勤務時間は短いですが、仕事の内容は正社員と大して変わらない仕事をしています。
店長の言うとおり、有給はもらえないのでしょうか?

A:
一般的に有給と言われているものは、法律上は「年次有給休暇」と言いますので、ここでは、「年休」とご説明させていただきます。

労働基準法上の「労働者」とは、「職業の種類を問わず、事業・・・に使用される者で、賃金を支払われる者」(労基法9条)をいいます。
労基法上の労働者にあたるかの判断にあたっては、労働時間の長短は関係ありません。そのため、パートなど勤務時間が短い人であっても、労基法が適用されますので、その結果、年次有給休暇(年休)についての規定も適用されることになります。
年休の要件は、「雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤したこと(労基法39条1項)」です。これにより、有給休暇の権利として年休を取得することになります。
年休の成立には、労働者からの何らの請求も不要とされていますので、使用者に年休が認められるとの主張をする必要はありません。例えば、フルタイムの正社員の場合であれば、4月に入社して9月まで働き続ければ、自動的に10月以降に10日間の年休を取得することになります。
パートタイマーやアルバイトなど、フルタイムの労働者よりも労働日数や労働時間が少ない労働者の場合であっても、その週または年あたりの所定労働日数に応じて、フルタイムの労働者よりも少ない日数の年休が比例的に付与されることになります。
また、先般の法改正で、労使協定で定めれば、年休を5日分までは、1日単位ではなく、時間単位で付与することが可能になりました。ただし、通常の会社であれば、午前あるいは午後のいずれかで指定されていることが多いでしょう。

なお、年休が当然に発生することと、年休を権利として使うかどうかは別の問題で、実際に年休をとる場合には、年休をとる日を使用者に伝える必要があります。
一方で、使用者には、年休として指定された日を変更できる権利が認められています。常に希望した日に年休が認められるわけではないことにご注意ください。
年休によって、事業の正常な運営を害する場合には、使用者の年休時期の変更の主張が認められやすくなります。そのため、会社側に代わりの人を確保する時間的余裕を与えるために、早めに有給の申請をすることが望ましいです。
また、就業規則などで、有給の取得に一定の手続きを要求している会社も多いと思いますので、就業規則等も事前に確認されておき、手続きにのっとって年休の申請をされるとよろしいでしょう。

もしわからないことなどありましたら、わたくしどものような専門家にご相談された方がよろしいと思います。

(7月20日放送)