Q:
母が亡くなったのですが、突然姉が、母から預かった遺言書があると言い出しました。見てみると、母の字で、母の死亡時に有していた財産の一切を姉にあげるという内容が書いてありました。
3人兄弟なのですが、母の生前に遺言書を書いたなどという話は、私も弟も聞いたことがありません。だいたい、きちんと公証役場で作られた公正証書にもなっておらず、ただ紙に書いてあるだけのものが遺言として有効なのでしょうか?

A:
公正証書になっていなくても、遺言はできます。一番簡単な遺言は、自筆証書遺言というものです。
自筆証書遺言というのは、例えば「自分の家を●●(特定の人)にあげる」などという遺言の内容と、遺言を書いた日付、遺言を書いた人の氏名を全部自筆で書いたものです。
日付や署名を自筆で書いてあるだけでなく、遺言内容も全部自筆であることが必要です。遺言内容をパソコンなどで作成して、署名だけ自分で書くというのでは、有効な自筆証書遺言にならないので注意が必要です。
また、自筆証書遺言を執行するためには、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所での検認という手続きをする必要があります。 

Q:
検認というのはどのような手続きですか?

A:
検認というのは、以前にも簡単にご説明したことがあるかもしれませんが、公正証書以外の遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人が、家庭裁判所に申し立てて、相続人に対して、遺言が存在することと、遺言の内容を知らせるとともに,遺言書の形状や加除訂正の状態、日付、署名など、検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

Q:
検認の手続が終わったかどうかはわからないのですが、もし検認の手続が終わった後には、遺言書どおりに財産を分けることになるのですね?遺言書には、母の財産の一切を姉にあげると書いてあったので、姉が全部相続して、私と弟は何ももらえないことになるのでしょうか?

A:
ご相談者と弟さんには遺留分というものがあるので、遺留分を請求することができます。
遺留分というのは、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人が、最低限相続できる相続財産のことです。
お母様の財産は、お母様が好きなように処分することができるので、お母様が、ご自分の財産の全部を誰か一人に相続させる、という遺言書を書くことが可能です。
しかし、そのような相続によって、亡くなった人の財産に生活を頼っていた親族などが生活できなくなってしまう事態も起こります。
そこで、亡くなった方の生活に依存していた相続人を保護するために、法律上認められている権利です。たとえ遺言があったとしても、遺留分というものが定められていて、最低限の財産を相続することができます。

Q:
遺留分はどのように請求すればよいのですか?裁判所で手続きしないといけないのでしょうか?

A:
裁判所で手続きをしなくても大丈夫です。口頭でお姉様に請求することもできますし、遺産分割のお話合いの席上などで、「遺留分の減殺を請求します」と言っても減殺請求をしたことになります。
ただし、遺留分減殺請求権には時効があります。ご相談者が、ご自分の遺留分が侵害されることを知ってから1年間か、相続開始の時から10年間の間に行使しないと、請求できなくなるので注意が必要です。
今回の場合は、お姉様からお母様の遺言書を見せられてから1年の間に、遺留分減殺請求をすることが必要です。

(9月14日放送)