Q:
離婚を考えている男性です。未成年の子どもが2人います。
離婚後は自分が子どもと一緒に暮らしたいと考えています。普通は母親が親権者になると聞いています。
父親では親権は認められないのでしょうか?

A:【親権とは?】
まず、親権とは何かというところからお話しします。親権とは、未成年の子どもを監護・養育し、その財産の管理をする権限です。
婚姻中は、子どもの親権は、父親、母親の両方が行うことができます(共同親権)。
離婚をしても、子どもの両親であることは変わりませんが、実際に父親と母親の2人で育てていくわけにはいかないので、どちらか一方を親権者と定めなければなりません(単独親権)。
このときは、どちらを親権者とするか、夫婦間の話合い(協議)で決めることができます。
ですから、ご相談者の場合も、奥さんが承諾してくれれば、親権者になることは可能です。
しかし、話し合いで決まらない場合は、裁判所に判断してもらうことになります。

Q:
妻は、離婚することについては承諾するが、子どもの親権は渡さないと言っています。
裁判所に決めてもらうよりほかはなさそうです。
親権は、どのような基準で決まるのでしょうか?

A:【親権者指定の判断基準①】
裁判所は、父親と母親のどちらが親権者になるのが子どもの利益になるのかという観点から、様々な事情を考慮して判断します。
具体的には、子に対する愛情の程度、養育に対する現在および将来の能力(父母側の事情)、子の年齢、発育状況、親との結びつきの度合い等(子ども側の事情)などが考慮されます。
お子さんが15歳以上であれば、子どもの意思を確認することが法律上規定されています。

Q:
妻は現在パート収入しかなく、経済的には私の方が余裕があります。
今後の子供の教育費などを考えれば、私の方が十分な養育ができると思うのですが、そういうことは考慮されないのでしょうか?

A:【親権者指定の判断基準②】
収入や資産、実家の援助等、経済的な余裕も考慮される要素の一つです。しかし、それだけで決まるわけではありません。
裁判所は、子の養育環境がなるべく変わらないこと(継続性・安定性)を重視する傾向にあります。子どもとの関係性やこれまで実際にどちらが主として子供を世話してきたか(継続性の原則)、今後も変わらず十分な世話が可能かなどが重要になります。
また、特に乳幼児のお子さんについては、母親の健康上の問題やネグレクトなどの特別な事情のない限り、母親に親権を認められることが多いようです。

Q:
妻の方が子どもと一緒にいられる時間は長いですが、自分も子ども2人のために、会社から育児のために短時間勤務を認めてもらうなどして、おむつ替えや食事の世話などにも積極的にかかわってきたつもりです。
ただ、一般的に母親が親権者となりやすいということはわかりました。
2人の子供の親権が無理であれば、せめてどちらか一方、上の男の子の親権者になるということは可能でしょうか?

A:【兄弟姉妹不分離の原則】
話し合いで奥さんが承諾してくれれば、上のお子さんを父親が、下のお子さんを母親が、それぞれ親権者になるとすることもできます。
ただ、裁判所は、原則として兄弟姉妹は一緒に育てるべきだと考えることが多いようです。
これは、一緒に育ってきた兄弟姉妹を親の都合で離れ離れにすることは好ましくないということからです。
もっとも、子ども同士の関係、年齢、これまでの成育環境(一緒に育ってきたか否か)などが判断要素となるので、認められるかどうかは、それぞれの事情によって総合的に判断されます。

これまでお話ししてきましたように、父親と母親のどちらが親権者としてふさわしいかについての判断は、それぞれのご事情によって総合的に判断されますので、事案ごとに異なってきます。
もしご不明な点などありましたら、わたくしどものような専門家にご相談ください。

(8月24日放送)